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最高裁判所第二小法廷 昭和41年(オ)106号 判決

上告人

河津清子

ほか二名

代理人

大脇保彦

ほか二名

被上告人

河津裕子

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告代理人大脇保彦、同大脇雅子の上告理由について。

日本国憲法の施行に伴う民法の応急的措置に関する法律(昭和二二年法律第七四号)(以下単に「応急措置法」という。)の施行中に相続が開始した場合については、同法第七条第二項は、同法第八条および第九条の規定によるものの外すべて旧民法(明治三一年法律第九号)の遺産相続に関する規定に従う旨規定しているところ、旧民法の代襲相続に関する規定は、被相続人の直系卑属が相続人となる場合において、右直系卑属が相続開始前に死亡し、又は相続権を失つたときについてだけ適用されるものとしていた(旧民法第九九四条および第九九条)。従つて、応急措置法の施行中に相続が開始され、同法第八条第一項および第二項第三号によつて被相続人の兄弟姉妹が相続人となる場合において、同人らが相続開始前に死亡していたときには、同人らの直系卑属は代襲相続権を有しないものと解するのが相当である。また、所論の民法の一部を改正する法律(昭和二二年法律第二二二号)の附則の規定も、右解釈の妨となるものではない。従つて、右と同趣旨の原判決(その引用する第一審判決を含む。)(以下同様とする。)は、正当である。

なお、論旨は、原判決には憲法違反があると主張するが、その実質は、原判決の前記実体法の解釈適用を非難するにすぎないところ、その理由のないことは、前記説示のとおりである。

されば論旨は、すべて採用できない。

上告代理人大脇松太郎の上告理由第一点、第二点および第四点について。

所論が理由のないことは、すでに前記上告代理人大脇保彦、同大脇雅子の上告理由に対する説示において述べたとおりであるから、論旨は採用できない。

同第三点について。

かりに所論の事実があつたとしても、右事実は、判決の結果に影響を及ぼすものではないから、論旨は採用できない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(草鹿浅之介 城戸芳彦 石田和外 色川幸太郎)

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